西表島、干立集落で見かけたヒンプン。
ヒンプンがあることで町と家がグラデーションを描くように
緩やかにつながっていく。
沖縄の古い集落の特徴は「柔らかな境界」「緩やかなつながり」
だと思います。そこに学ぶべきヒントがあるように思います。

考えてみれば「ヒンプンハウス」をブログにアップしていませんでした。
ヒンプンハウスは新建築、住宅特集に発表当時は
ほとんど話題にもならなかったと思います。
極、一部の人たちが共感していただきました。
ただ、その後じわじわと認知されていった仕事ではないかと思います。
ヒンプンとは沖縄の伝統的な住まいにおいて
町と家を緩やかに繋げる環境装置のようなものだと思います。
目隠しであり、魔物を払う役割もあり、ハレとケを振り分ける、、、
コミュニケーションを司る役割があった。


東京の住まいはとても閉鎖的になってしまったと思います。
防犯のこと、高気密、高断熱の省エネ住宅、
コミュニティの拒否、、、などが主な要因でしょう。
高性能な住まいではあるが、町とのつながりを拒否し、
生活感のない、書き割りのような町並みが創りだされているのではないでしょうか。
町に開くか、閉じるか、、、、ではなく、閉じたい時もあれば開きたい時もある
そのような幅のある、町と家を制御する装置が沖縄の「ヒンプン」だったと思います。
その形態を取り入れるのではなくて
考え方、その装置の「関係」を取り入れることが大事。
(詳しくは新建築 住宅特集2003年3月号、または「オキナワの家」参照)。
この家は 三方を隣地に囲まれ、なかなか開放できませんでした。
思い切って空に開放することを考えました。
沖縄には「クサテ」(腰当て)という考えがあります。
子供が最も安心していられる形は親の膝の上で抱っこされている形を言います。
正面に向かって背後を守られている形です。
この家は偶然にも、そんな沖縄的な「クサテ」の形になり、
南側に開いているのですが、三方を守られ、
逆に落ち着いた、安心感のある配置となりました。

ヒンプンハウスはいくつもの新聞で取りあげられました。
その共感は何だったのか最近少しずつ分かってきた・・・。
都会の家づくりが、まち並みが、このままではダメだろうということ、、、。
その答えが、決して「ヒンプンハウス」ではないのですが
「ヒンプン」という環境装置、関係を制御する装置のようなものが
何だか、町にも住まい手にも楽しそうでいいじゃないか!!
ところでヒンプンってなんだ?(笑)、、、ということが
何となく共感みたいなもの(笑)につながったのではないか?

最近の若い建築家の仕事に顕著なのが塀や門扉をつくらないこと。
大抵、予算が限られた仕事が多いということもあるのでしょうが、
何となく、町と住まいの関係を意識しているからだと思います。
町から塀と門扉がなくなり、緑が増えるだけでまち並みが変わります。
簡単なことに思えますが、みんなの意識が変えるのはとても大変。
形が揃っていることがいい町並みではなくて、
生活感の連鎖があることがいい町並みなのではないか?と思えるようになりました。
プライバシーに神経質になることなく、防犯もいろんな手段があること・・・
だから、住まいはもっと自由に考えられる・・・
すこしづつ、沖縄の「テーゲー」な感覚を浸透させないといけないのかもしれません(笑)。

*注意!!
写真には新建築社の写真がいくつか含まれております。
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(画質は落としてありますのでご了解願います)
設計:伊礼智設計室
施工:相羽建設