エーアンドエー時代の担当だった「吉井町の家」の奥さんから手紙が届いた。
懐かしい・・・10年以上も前のことだ。もう70を超えられたとのこと・・・。
吉井町の家は自分にとって思い出深い仕事である。
丸谷さんに見てもらいながらも、自分らしい設計となった。
ご夫婦お二人のための「終の棲家」・・・
介護ができるように、雨に濡れないで車に乗れるように・・・
年寄りの終の棲家だけどちょっと洒落た家にしてね・・・というご要望だったと思う。
一見、地味だが、いろいろなことを試した家だった。
商品化される前の珪藻土の塗り壁、屋根とゾロに納まったOM集熱面やトップライト。
煙道採熱方式のストーブのリターンを兼ねたハイサイドライトの納め方など・・・
思い出深い。
手紙の中の奥さんはまるで変わっていなかった(笑)。
「オキナワの家」にまつわる、ざまざまな偶然の重なり、
エコビルド賞受賞の新聞記事を見たこと・・・などうれしそうに、溢れるように書きつづられていた。
ぼくが息子さんとほぼ同じ歳なので、当時から息子のように可愛がっていただいたのだが
確かに吉井町の家は「母なる家」という感じがする。
「toto通信」(2000年VOL1)の特集は「母なる人の家を考える」。
その中で吉井町の家を林昌二さん達が見に来てくれた。
林昌二さんはその頃、奥様の林雅子さんが病に伏せている頃だったと思う。
きびしい林さんが吉井町の家を怖いくらい褒めてくれた。
「設計の作法」と「住まい手の作法」が合致して、
その特集にぴったりの家だったのではないか?と思う。
その後、2001年に林雅子さんは亡くなられる。
さて、吉井町の奥さんにはどんなご返事を差し上げたらいいだろう・・・楽しみだ。
吉井町の家(住宅特集96年8月号、toto通信2000年VOL1)
設計:エーアンドエー(丸谷博男 伊礼智)
施工:小林建設