5月28日、 27年前に奥村設計所で設計された「大泉学園の家」を久々に見せていただいた。 設計:奥村昭雄+丸谷博男・・・丸谷さんのご両親の家なのだが、 ご高齢になって住めなくなり、この家はもうすぐ人手に渡る。 もう、これが最後かも知れないと思って家族で出かけた。 この家は後にOMソーラーと呼ばれる パッシブソーラーシステムを試みた家として後世に伝えられる家である。 この家がなければOMはなかった・・・ 丸谷さんの実家であり、30歳の丸谷さんが エネルギーを注いで設計した家である・・・それを許した奥村夫妻もすごい。 まあ、ソーラーやってみる?と振った手前、先生方としてはしようがなかったであろう(笑)。 何しろ、確か丸谷さんは丸1年、この家だけやっていたとご本人から聞いた・・・ 法規間違えて、やり直したり(笑)・・・(事務所としては大赤字である)。 安藤忠雄さんが建築家は依頼者を被害者にするくらいでないと(笑)・・・ ある雑誌で語っていた。 この家はまさにそう・・・可愛い息子のためにご両親が実験台となった(笑)。 それが、その後、OMソーラーとなるのである。 この家は定説としてはソーラーハウスとしてくくられると思うのだが、 僕は昔から、どうしても、そうでない部分に興味を引かれる。 ソーラーでなくても十分、魅力のある家である。 定説でない見方はソーラーに対して知識が足りないから・・・と考えていたのだが、 最近は歳をとり、図々しくなって、それなりに知識も自信もついた。 定説でない、見方も悪くないではないかと、自信を持って思う。 この家は4間角の無駄の少ない、 コンパクトでスタンダードとなり得るおおらかなプランを持っている。 合理性を追求しながらも、このプランは丸谷さんの性格が そのまま反映されているように思う。 2階リビングで角が開口部で解放されて抜けている・・・ そこがおおらかさに繋がる・・・丸谷さんらしい。 僕は学校を出て、丸谷さんの事務所に10年、世話になった。 丸谷さんが奥村先生のところを独立して、ほぼ最初からご一緒させていただいたのだが、 いつも飲んでいると「丸谷さんは大泉の家を超えていない・・・」と遠慮なく話していた。 丸谷さんも決して悪い気はしないようで、「そうだね・・・」と、なんだか、うれしそうだった。 この家は丸谷さん自身、いろんな事を考えて挑戦した家だ。 うまくいったこと、失敗もたくさん、27年たってもまだやっていないことも・・・ 57歳の本人が当時の30歳の自分を認めているようで、すがすがしい・・・そんな1日だった。 (自分にそんな日が来るのだろうか・・・) この家のクレジットは奥村設計所だけれど、 丸谷さんの代表作を掲げろ、といわれたら、真っ先に「大泉学園の家」を入れたい思う。 昔、住宅建築の編集長だった植久さんと、この家の良さについて話をした。 「愛情がこもっているからね・・・」と植久さんはニコニコしながら言った。 前代未聞のソーラーハウス、両親の家・・・ 掛けたエネルギーは時間がたっても嘘をつかない・・・いい家だと思う。 OMの原点でもあり、丸谷さんの原点でもある。
by satoshi_irei
| 2006-05-29 21:52
| ・住まい・建築
|
Trackback(1)
|
Comments(17)
Tracked
from ShopMasterのひ..
at 2006-05-29 22:08
タイトル : OMソーラーの原点
OMソーラーがこの世に誕生して20数年になります。もともとは奥村昭雄氏が30年近く前に発案した空気集熱ソーラーシステムがその発端。 OMの原点とも言える家を見学する機会がありました。 奥村昭雄氏と丸谷博男氏の設計による「大泉学園の家」。27年前に建てられたものだそうです。OMの歴史を感じます・・。屋根には集熱ガラス面が見えます。屋根一面ガラスです。蓄熱槽はなんと地下3mのサイロに石を積み込んだもの。丸谷氏が当時の様子を懐かしそうに語ってくれました。 ← ちょっとココを押してみませんか・・... more
Commented
by
th0031 at 2006-05-29 22:14
そうでしたか、irei さんは丸谷さんのところで10年・・
吉村順三からの確かな流れが息づいているのですね。歴史を感じます。
0
Commented
by
satoshi_irei at 2006-05-29 22:31
TH0031さん
先日はどうも。 僕らの世代となるは吉村先生、奥村先生と比べられるのが かなりつらいのです・・・とてもかなわないので 自分の得意とするところで勝負しようともがいているところです。 そんな中で、「大泉学園の家」は面白い存在なのです。 丸谷さん・・・あれでいいじゃない!と言っても、本人はそうは思わない。 同じ事が自分にも言えると思います。
Commented
by
tanaka-kinoie at 2006-05-29 23:16
私も時間があれば行きたかったのですが・・・・・
私みたいに新参者はOMの原点など知る由もありませんでしたが伊礼さん、 迎川さんに接しているお陰で多少なりとも先人の苦労が伝わってきます。 何といっても今の我が社があるのは、OMのお陰です。 こう言った大変な努力に感謝します。
Commented
by
kokonoma at 2006-05-30 00:52
こんばんは。丸谷さんのお話を聞いているときに時折通り抜ける
風の心地よさはなんとも言えず気持ちの良いものでした。 この居心地はお話の内容ともどもたいへん勉強になりました。 それにしてOMの原点の蓄熱が12tの砕石から始まったとは驚きました。 これからお風呂の掃除を頑張ってしていきたいと思います(笑)。
Commented
by
masa-aki.m at 2006-05-30 10:16
なんとか滑り込みで見せていただきました。
二階リビングがシンプルでおおらか、角に設けられた開口部がいい!行ってよかった。勉強になりました。
Commented
by
5歳児の父
at 2006-05-30 10:49
x
丸谷さんに、久々にご挨拶もしたかったので、是非行きたかった
のですが、都合がつかず残念でした。本当に残念です。 (まして、伊礼さんも行かれていたのなら尚更) しかし、お父様の健康を犠牲にしつつ、OM開発を進めたという くだりには、驚くと共に畏敬の念を感じました。 NHKのプロジェクトXで、取り上げて欲しかったようなお話ですね。 また、この文からは伊礼さんの思い入れも十二分に伝わって きました。
Commented
by
tokyomachiya at 2006-05-30 12:22
伊礼さん、この家って絶対丸谷さんの代表作だよね!
丸谷さんと飲んでいると「未だに大泉学園の家を越えられないんだ・・・」という話になります。 とてもわかりやすい記事ですね。 残念ながら、僕は行けませんでしたが(もう何度も見ているから御容赦を)、OM東京多摩会議でプリントを配って御案内しておきました。 ここで初心に戻って、OMソーラーを考え直してみるいい機会ですね! じつは、6月の全国経営者会議の見学コースに入れてくれるように直訴したんですが・・・OMソーラーの意義よくわかっていない人には無理かなぁ・・・。
Commented
by
satoshi_irei at 2006-05-30 13:58
Commented
by
satoshi_irei at 2006-05-30 14:17
Commented
by
satoshi_irei at 2006-05-30 14:22
今回の見学会には参加できませんでしたが、以前、見せていただいたときの印象が忘れられません。まさに、OMの原点が、いろいろな意味でここにあると言えるのだと思います。
「OMの多様化」に僕も一票投じたいです。
Commented
by
satoshi_irei at 2006-05-30 20:07
KOKONOMAさん
3間角の家でいいのは 増沢まことさんの自邸、 それの骨組みを使った小泉誠の「スミレアオイハウス」 もちろん、「東京町家・9坪の家」も入れましょう(笑)。 4間角の家でいいのは、 中村好文さんの「上総の家」と奥村事務所の「大泉学園の家」。 僕も4間角に参入してして見たいと思います(笑)。 ・・・お風呂の掃除よろしくお願いします(笑)。
Commented
by
satoshi_irei at 2006-05-30 20:24
宮崎駿さんが、ジブリをつくるときに
その辺のことをとっても悩んだと何かに書いていましたね。 宮崎さんは、アニメ制作という大変な労働の割には経済的に恵まれないという状況を良しとしなかった。仕事をして報われないなんていうことが絶対ないようにしたい、と強く思ったそうです。 頭が下がります。
Commented
by
tokyomachiya at 2006-05-30 23:38
最近は4間角の家でいいものに「木造ドミノ」が加わりました!(笑)
Commented
by
surugaki at 2006-05-31 05:45
私も伺いたかったです。(涙)この家が掲載された「住宅建築」は、今でも残してありますが、
ブログを拝見しますと、良い歳のとり方をしているのがよく分かります。人生もそうありたいものです。
ご旅行中のお留守のところ失礼します(笑)
まさに挑戦の家そのものなんでしょうね。 丸谷さんにとっての「きっかけとなる一軒」と察する事が出来ます。 その点、日々流されている自分には刺激的な記事として見させて頂きました。私もそのような「一軒」にめぐりあう為に日々精進しなくては・・(苦笑) また勉強させて下さい。
|
カテゴリ
全体 ・profile/設計条件 ・伊礼智設計室活動記録 ・掲載誌 ・住まい・建築 ・まかないごはん ・建築巡礼 ・たびたびの旅 ・食 ・i-works project ・住宅デザイン学校 ・沖縄 ・路上採取 ・工作少年 ・俵屋旅館の不思議 ・江戸川 solar cat ・東京町家・9坪の家 ・ソーラータウン久米川 ・相模原の家 ・東京町家・町角の家 ・古くて新しい事務所 ・東京町家 あずきハウス ・ヒンプンハウス ・小田原の家 ・那珂湊の家 ・幕張本郷の家 ・栃木、小金井の家 ・i-works 2008 ・15坪の家 ・9坪の家・length ・守谷の家 ・秩父の家 ・沖縄 与那原の家 ・浜松・大蒲町の家 ・白馬の山荘 ・あやさやハウス ・小さな森の家 ・与那原の家2 ・葉山の家 ・長岡・前川東の家 ・南与野の家 ・浜松・宮口の家 ・北葛西の家3 ・下田のゲストハウス ・工務店の社食(改装) ・はりまの杜 ・富山 高岡の家 ・田園調布本町の家 ・つくばi-works 1,0 ・阿佐ヶ谷の家3 ・名古屋の家 ・熊本の家 ・茨城・みらい平の家 ・栃木・雀宮の家 ・元吉田の家(+K) ・i-wrks2,0阿部モデル ・京都サロン ・谷口工務店社屋 ・松本 つむぐいえ ・三重 内に外を持つ家 ・くらしこの家 ・i-works2015つむじ ・武蔵野の家 ・沖縄 結いの家 ・琵琶湖湖畔の家 ・i-works4,0 マキタモデル ・花小金井の家 ・諫早の家 ・新潟・魚沼の家 ・福島の家 ・近江高島の家 ・コミュニケーションギャラリーふげん社 ・大工の手 ・東京藝大 ・その他 ・ジャパン建材フェア 翻訳
ライフログ
以前の記事
2024年 10月 2024年 09月 2024年 08月 2024年 07月 2024年 06月 2024年 05月 2024年 04月 2024年 03月 2024年 02月 2024年 01月 2023年 12月 2023年 11月 2023年 10月 2023年 09月 2023年 08月 2023年 07月 2023年 06月 2023年 05月 2023年 04月 2023年 03月 2023年 02月 2023年 01月 2022年 12月 2022年 11月 2022年 10月 2022年 09月 2022年 08月 2022年 07月 2022年 06月 2022年 05月 2022年 04月 2022年 03月 2022年 02月 2022年 01月 2021年 12月 2021年 11月 2021年 10月 2021年 09月 2021年 08月 2021年 07月 2021年 06月 2021年 05月 2021年 04月 2021年 03月 2021年 02月 2021年 01月 2020年 12月 2020年 11月 2020年 10月 2020年 09月 2020年 08月 2020年 07月 2020年 06月 2020年 05月 2020年 04月 2020年 03月 2020年 02月 2020年 01月 2019年 12月 2019年 11月 2019年 10月 2019年 09月 2019年 08月 2019年 07月 2019年 06月 2019年 05月 2019年 04月 2019年 03月 2019年 02月 2019年 01月 2018年 12月 2018年 11月 2018年 10月 2018年 09月 2018年 08月 2018年 07月 2018年 06月 2018年 05月 2018年 04月 2018年 03月 2018年 02月 2018年 01月 2017年 12月 2017年 11月 2017年 10月 2017年 09月 2017年 08月 2017年 07月 2017年 06月 2017年 05月 2017年 04月 2017年 03月 2017年 02月 2017年 01月 2016年 12月 2016年 11月 2016年 10月 2016年 09月 2016年 08月 2016年 07月 2016年 06月 2016年 05月 2016年 04月 2016年 03月 2016年 02月 2016年 01月 2015年 12月 2015年 11月 2015年 10月 2015年 09月 2015年 08月 2015年 07月 2015年 06月 2015年 05月 2015年 04月 2015年 03月 2015年 02月 2015年 01月 2014年 12月 2014年 11月 2014年 10月 2014年 09月 2014年 08月 2014年 07月 2014年 06月 2014年 05月 2014年 04月 2014年 03月 2014年 02月 2014年 01月 2013年 12月 2013年 11月 2013年 10月 2013年 09月 2013年 08月 2013年 07月 2013年 06月 2013年 05月 2013年 04月 2013年 03月 2013年 02月 2013年 01月 2012年 12月 2012年 11月 2012年 10月 2012年 09月 2012年 08月 2012年 07月 2012年 06月 2012年 05月 2012年 04月 2012年 03月 2012年 02月 2012年 01月 2011年 12月 2011年 11月 2011年 10月 2011年 09月 2011年 08月 2011年 07月 2011年 06月 2011年 05月 2011年 04月 2011年 03月 2011年 02月 2011年 01月 2010年 12月 2010年 11月 2010年 10月 2010年 09月 2010年 08月 2010年 07月 2010年 06月 2010年 05月 2010年 04月 2010年 03月 2010年 02月 2010年 01月 2009年 12月 2009年 11月 2009年 10月 2009年 09月 2009年 08月 2009年 07月 2009年 06月 2009年 05月 2009年 04月 2009年 03月 2009年 02月 2009年 01月 2008年 12月 2008年 11月 2008年 10月 2008年 09月 2008年 08月 2008年 07月 2008年 06月 2008年 05月 2008年 04月 2008年 03月 2008年 02月 2008年 01月 2007年 12月 2007年 11月 2007年 10月 2007年 09月 2007年 08月 2007年 07月 2007年 06月 2007年 05月 2007年 04月 2007年 03月 2007年 02月 2007年 01月 2006年 12月 2006年 11月 2006年 10月 2006年 09月 2006年 08月 2006年 07月 2006年 06月 2006年 05月 2006年 04月 2006年 03月 2006年 02月 2006年 01月 2005年 12月 2005年 11月 2005年 10月 2005年 09月 2005年 08月 2005年 07月 2005年 06月 2005年 05月 2005年 04月 2005年 03月 2005年 02月 2005年 01月 2004年 12月 2004年 11月 2004年 10月 2004年 09月 2004年 08月 最新のコメント
最新のトラックバック
検索
タグ
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||