俵屋の入り口は、素っ気ない。
塀の中にポコッと穴が空いているような感じなんです。
大きなホテルや旅館のように立派な玄関なんてものではありません。
ところが、さすが俵屋・・・このアプローチがとても気に入りました。
街を引き込むように屋根の掛かった引きの空間があり、
そこを右に折れると屋根のない中庭に出ます。
その左手に民家の縁側にも似た玄関・・・というよりも靴脱ぎ場があるのですが
江戸末期の雰囲気を残した、慎ましやかな風情で、
「俵屋に泊まるぞ!!」という無駄な緊張感がす〜とほぐれる感じがするのです(笑)。



俵屋の「アプローチの仕組み」は外と内の繰り返しでしたが、
僕の設計した「光が丘の家」(新建築・住宅特集00,9月号)と、
「ヒンプンハウス」(新建築・住宅特集03,3月号)のアプローチは
外のアプローチを内蔵化し、そこから玄関や勝手口にアプローチすることになっています。
建具を開けて玄関だと思ったら、そうでなくて、さらに奥に続く・・・。
「奥」を感じさせる空間の引き込み方となっていると思います。
俵屋のアプローチはまさにそう・・・これが京都か?・・・と思ったものでした。
そう言えば、沖縄の民家に見られる「ヒンプン」も奥を感じさせる、
空間の引き込み装置かも知れませんね。
先日、建築家の吉井歳晴さんが僕の和室の取り方について「奥」を感じる・・・
というような事を話してくれました。
本人としてはそのような意識はなかったのです。
今考えると、上記したような「街からの空間の引き込み方」が、
実際の住まいの大きさよりもず〜と「奥」を感じるような設計になっている・・・
それが奥の方に和室を作る傾向があるので(どうも、僕はそうらしい)、
そう感じたんでしょうね・・・ちょっと、納得。