俵屋旅館の不思議  「奥」を創り出すアプローチ
俵屋の入り口は、素っ気ない。
塀の中にポコッと穴が空いているような感じなんです。
大きなホテルや旅館のように立派な玄関なんてものではありません。

ところが、さすが俵屋・・・このアプローチがとても気に入りました。
街を引き込むように屋根の掛かった引きの空間があり、
そこを右に折れると屋根のない中庭に出ます。
その左手に民家の縁側にも似た玄関・・・というよりも靴脱ぎ場があるのですが
江戸末期の雰囲気を残した、慎ましやかな風情で、
「俵屋に泊まるぞ!!」という無駄な緊張感がす〜とほぐれる感じがするのです(笑)。

俵屋旅館の不思議  「奥」を創り出すアプローチ_b0014003_14503311.jpg俵屋旅館の不思議  「奥」を創り出すアプローチ_b0014003_14505044.jpg俵屋旅館の不思議  「奥」を創り出すアプローチ_b0014003_1451954.jpg俵屋旅館の不思議  「奥」を創り出すアプローチ_b0014003_14512716.jpg


俵屋の「アプローチの仕組み」は外と内の繰り返しでしたが、
僕の設計した「光が丘の家」(新建築・住宅特集00,9月号)と、
「ヒンプンハウス」(新建築・住宅特集03,3月号)のアプローチは
外のアプローチを内蔵化し、そこから玄関や勝手口にアプローチすることになっています。

建具を開けて玄関だと思ったら、そうでなくて、さらに奥に続く・・・。
「奥」を感じさせる空間の引き込み方となっていると思います。
俵屋のアプローチはまさにそう・・・これが京都か?・・・と思ったものでした。
そう言えば、沖縄の民家に見られる「ヒンプン」も奥を感じさせる、
空間の引き込み装置かも知れませんね。

先日、建築家の吉井歳晴さんが僕の和室の取り方について「奥」を感じる・・・
というような事を話してくれました。
本人としてはそのような意識はなかったのです。
今考えると、上記したような「街からの空間の引き込み方」が、
実際の住まいの大きさよりもず〜と「奥」を感じるような設計になっている・・・
それが奥の方に和室を作る傾向があるので(どうも、僕はそうらしい)、
そう感じたんでしょうね・・・ちょっと、納得。
by SATOSHI_IREI | 2006-02-01 15:14 | ・俵屋旅館の不思議 | Trackback(1) | Comments(7)
Tracked from 余は如何にして道楽達人に.. at 2006-06-05 05:05
タイトル : 名旅館、俵屋のグッズが買える「遊形」
京都(いや日本の?)三大旅館と呼ばれるのが、京都中京の麩屋町通り沿いにある柊屋旅... more
Commented by tokyomachiya at 2006-02-02 00:07
奥・・・魅力的な空間は奥が深いですね!
Commented by u-och at 2006-02-02 16:26
建築家村野藤吾のパトロン大富豪の泉岡宗助語録に
「玄関を大きくするな、門戸を張るな」
「外からは小さく、低く、内に入るほど広く高くすること」
「腕の良さを見せようとするな、技を殺せ」
という言葉を思い出しました。
いつか泊まりに行きたいな!
Commented by SATOSHI_IREI at 2006-02-02 16:45
落合さん、俵屋まさにそうですよ。
簡素に見せておいて、とんでもない素材と腕ですよね。
Commented by SATOSHI_IREI at 2006-02-02 16:49
迎川さん、見通しをきかせることと、
奥を感じさせつつ、見通せない・・・というのを使い分けたいですね。
Commented by surugaki at 2006-02-02 17:26
本日、住宅建築2月号が届きました。伊礼さんの開口部の考え方は、一語一句残さず読ませて
いただきました。そういう意味では、この記事とセットで拝読するとより良いですね。
Commented by satoshi_irei at 2006-02-02 18:01
今井さん、届きましたか?
うちははまだなんですよ(泣)。
ところで・・・開口部の話し、してました??
Commented by surugaki at 2006-02-02 18:08
開口部の写真が、雄弁に語っていますし、76ページのディティールもそれを物語っています。
口ほどにものを言うとは、このことかもしれません。


<< 住宅建築2月号   発売中らし... 俵屋の不思議  「暁翠の間」、... >>