俵屋 5  客室の空間の骨格について
客室の空間の骨格の話です。
日本建築は柱の太さ、内法の高さ、天井の高さ、間の種類(関東間、関西間・・・)
で空間がだいたい決まります。
それに、柱の面の寸法、枠ちり、鴨居や天井縁の見つけの寸法で
かなり空間の性格が決定されると言っていいでしょう。
面の取り方に加えて、建具・・・障子などのデザイン、(框や組子の寸法)で色気の具合が決まります。
仕上げの色、素材で空間の「風合い」が出てきます。
今回はその辺の必要最小限の実測結果の話です。

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上の実測をご覧の通り、吉村順三事務所ですから、
京都の一般的な寸法から言って、無骨です。

コンクリートの箱の中に木造の空間を創り、木造のグリットは960(ミリ)になっています。
関東間が910ですからゆったりしています。

天井高さは「今回は8尺3寸(2490)でいこう」と吉村先生がおっしゃったようです。
奥村先生は「ちょっと高いなあ・・・」と内心思っていたとのこと。
柱は「3寸8分(114)にしよう」と言うことで、
内法は1890、鴨居の見附は36,天井廻り縁は30(図面でも確認)・・・無骨ですねえ。
数寄屋でありながら、書院って感じですよね。

ただ、天井高さは実測では2350でした。図面集での「竹泉の間」の天井高さは2430・・・。
1階と2階では変えたのかも知れませんし、現場で変わったのかも知れません。

障子の框は30、見込み30、組子の見つけは15・・・いつもの「吉村障子」とは違います。
雪見障子にしたためでしょう。

ここで、気になったのが柱の面取り寸法なんです。
実測では30になっています・・・大きいですね・・・これは測り間違いではないか?と
「吉村順三の設計図集」新建築社を引っ張り出してみました・・・ありました、
俵屋の「竹泉の間」の平面詳細と展開図が丸ごと出ていました。
この部屋は中村好文さんが「意中の建築」で宿泊してレポートした部屋です。

それによると柱の面は6ミリとなっています(若き日の奥村先生の文字が幼い)。
実測の間違いか?・・・でも、記憶では「面は大きかったなあ・・」と思っていました。

俵屋 5  客室の空間の骨格について_b0014003_21294679.jpg俵屋 5  客室の空間の骨格について_b0014003_213048.jpg

ここはデジタル写真のいいところ・・・写真を拡大して見ると、
確かに30くらいありそうです・・・20くらいかな?
ほっとすると共に、面取り30・・・この大きな面はどうしてなのか?が理解できません。

もしかしたら、あとで削ったのかも知れない・・・と思っても見たのですが、
実測図の中に「鴨居との取り合い」の絵があります・・・
これはどう見ても、後で削ったと言うわけではなさそうです。

いやいや、柱は天井まで通っているのであるから、後で削ってもこうなる・・・と、
また思い返してみたり・・・。
日本建築に疎い自分にはこれ以上わかりません。
のんびり、調べて見ます・・・と言うわけで、今日はここまで。

面が大きいことで、少し、無骨さが和らいでいるような気もします。

*図面をよく見ると付け柱が面取り6ミリで、柱は基本的に面皮柱でした。

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ほら、障子の枠の見付と同じくらいでしょう・・・30くらいですよ。
by satoshi_irei | 2006-01-04 21:45 | ・俵屋旅館の不思議 | Trackback | Comments(10)
Commented by tokyomachiya at 2006-01-05 10:40
内法1890は、面白い寸法ですね。
天井高2350も、少し高い気がします。
しかも元設計では2490・・・?
私の仮説では、体格が違う外国人が泊まる京都、東京都は違う文化を持つ京都ということが大きく影響しているように思います。
ちなみに、960/910=1.055これが文化の違いのキーワード。
伊礼さんは、下関のモデュールの違いを高さには持っていかなかったけど、吉村先生は105.5%の拡大コピーをした。
しかし、実際の空間を見たらやっぱりどうも締りがない・・・。
ということで、図面が変わっていったのではないでしょうか。
「105.5+欧米人の体格差」と「江戸っ子吉村順三の空間感覚」の鬩ぎ合いがこの空間を生んだと思うのですが・・・。
巨匠Nさんが伝統的な日本家屋(天井高2700)の増築をしたときのことをちょっと思い出してしまいました。
面取り30は、何とか威張り過ぎた空間を柔らかくしたいという思いで、障子の納まりギリギリまで面を取ったのでしょう。
Commented by tanaka-kinoie at 2006-01-05 11:09
伊礼さん
おめでとうございます。
大晦日まで仕事してから夜に名古屋に向い、正月は名古屋で迎えました。
(なんとか3日間休めました)
一昨日帰京、今日から私だけ仕事です。
さてこの面は杉の面皮柱では無いでしょうか?
面皮でも3.5寸柱で面巾は普通7分程度ですから1寸は大きいように思えますが画像を見る限りでは面皮柱に見えます。
床の間寄りの左側の柱も面皮柱に見えますね。
面皮であれば天然ですので多分肌皮の大きい物をここにしか持ってこれなかったのだと思いますが・・・・・
実証して報告します(笑)
Commented by tokyomachiya at 2006-01-05 11:22
たしかに、鴨居のところの写真は杉の面皮ですね!
Commented by satoshi_irei at 2006-01-05 11:24
迎川さん、
たぶん、プロポーションなんでしょうね。
吉村先生は柱のちりいくら、面はいくら・・・と指示したそうですが、
奥村先生は
しっかりした存在感の柱になり、書院ぽいと感じたようです。
Commented by satoshi_irei at 2006-01-05 11:34
田中さん、そうか、面皮かも知れません!!
実際、見た目でははそんな感じでなかったので、
気づかなかったのですが
面のラインがきりっとしてなかったので面皮でしょうね。
新建築の詳細図集を見てみると・・・・
竹泉の間の平面詳細図に「面皮」という書き込みが見られます。
付け柱のみ面取り6ミリでしょうね。
さすが、田中さんです・・・理解できました。

しかし、面皮なのに数寄屋ぽっくないような・・・(笑)。
Commented by satoshi_irei at 2006-01-05 12:13
でも、面皮だとちょっと丸みがありますよね・・・
そんな感じはまるでなかったな?
面皮に見えない・・・面皮(笑)・・・勉強しなければ!
Commented by kazuo-nakazato at 2006-01-05 13:05
今度旅行に行くときはメジャーも持っていこうと思いました。
スケッチに出来るかが問題ですが人に見せなければ大丈夫そうです。(笑)
Commented by satoshi_irei at 2006-01-05 13:40
中里さん、
メモだと思えば気が楽です。
どっかで大ぴらに披露するときには、清書すればいいですから(笑)。
Commented by surugaki at 2006-01-05 18:32
俵屋の不思議は、一語一句残らず拝読させていただきましたが、とても興味深く、
私の保存版にさせていただきます。ありがとうございました。
Commented by satoshi_irei at 2006-01-06 09:32
今井さん、まだまだ続きますよ(笑)。


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