与那原の家は関東で暮らしていた息子さんの家族と
沖縄で暮らしていたお母さんのための2世帯住宅です。
できる限り平屋にしたいこと、バリアフリー、キッチンや水回りは一緒でいいけれど
それぞれの世帯の生活も大事にしたい・・・そんなご要望だったと思います。
つかず、離れずの関係をどう形にしようか・・・?
頭に浮かんだのが「識名園」、琉球王朝の離宮・・・歩き回れるプランの中の
3つの小さな中庭が印象的だったのです。
中庭の周りに動線があり・・・なんだか中庭がプランを司っているような感じがして、
簡単にプランを採ってみました。


中庭の配置でプランが成立する・・・
「家族・世帯」の「関係、距離」がつくれるのではないか・・・?
今回、識名園を思い出して2つの中庭で設計を組み立ててみました。

埋め立ての分譲住宅地、平坦な敷地に新しい家がたくさん建ちはじめています。
最近の沖縄の家は「まぶしい家」「モダンな家」が増えたなあ・・・と思います。
遮熱塗料のせいか?ガラス張りのデザインが増えたからか?
風景もずいぶんと変わってきました。
クライアントはそのような住まいではなくて
いつもの伊礼智設計室の、穏やか(地味?)なテイストを望まれました。
喜んで、遠慮なく、いつものような仕事を心がけさせていただきました(それしかできません)。
2つある中庭は「海辺の風景」と「やんばるの風景」を創り出そうとしました。
写真は石灰岩の床に「ヘゴの木」をメインにシダ類で足元をまとめています。
「ヘゴ」の枝がもっとのびのびと開いて、活力のある沖縄の風景を創ってもらいたいものです。



玄関は木製の引き戸、ロードバイクの格納庫でもあります。
脇の植物は「イトバショウ」・・・佇まいがいい。
玄関を抜けると庇の出が2メートルの「アマハジ」へ・・・。

南側の道路から見る。
生け垣で用意してもらった「クロトン」がかなりさみしい(笑)
「沖縄ではすぐ成長するから・・」ということでしばらく我慢。
玄関で靴をぬいで正面に「海辺の風景」。
それを右へ曲がるとリビング。
リビングとお母さんのテリトリーであるタタミの間(トートーメーがある)の
間の中庭が「ヤンバルの風景」・・・もうちょっと荒々しくなるとちょうどいい(笑)。



中庭の周りには「動線」を設けてあちこちにアクセスできるようにしてあります。
家族があちこちに勝手に居ることができる、移動できることがいい。
「動線」は風の道にもなってとても涼しい。


沖縄の伝統的な民家で「クチャ」と呼ばれる部屋があります。
「裏座」の事で寝室に使われることが多い・・
今回、この「クチャ」にあたる場所がダイニングルームです。
2世帯の接点ともいうべき位置にあり、中庭の裏の北側に位置し、
道路から最もプライバシーが守れて、落ち着いて居られる場所です。
北側の部屋はやっぱり涼しい・・・内部から現場発砲ウレタンを吹き付け断熱し、
屋根は防水を兼ねた遮熱塗料を塗り、加えて、光が絞られていること、
風が抜けていくことで涼しさが増していると思います。
2世帯の関係、道路からの距離の取り方(町に開きつつプライバシーを守る)、
通風を促すための開口部のあり方・・・
それらが2つの中庭の配置によってうまく解けたのではないかと思います。




沖縄・与那原の家
設計:伊礼智設計室(伊礼智、島華子)
施工:大興建設
主な仕上げ
屋根:遮熱・防水塗料塗布
外壁:コンクリート打ち放しの上、アクアシール2回塗り
内部壁・天井:プラスターボード下地、月桃紙貼り
内部床:チーク無垢フローリング、蜜蝋ワックス仕上げ
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