守谷の家の写真が上がってきました。
ハウスメーカーの分譲地の中にひっそりと佇む住まいです。
沖縄の伊是名島に銘苅家という住宅があります。
23年ぶりの銘苅家を訪れたとき、「佇まい」について考えさせられることがありました。
その経験が守谷の家に反映されています。
その時の「気づき」は下のコラムよりどうぞ。
住まいの佇まい
銘苅家について
敷地は北側に緑豊かな遊歩道を持ち、それが決め手となって計画がスタートします。
南の道路からも、その遊歩道が望めて、視界が繋がるといい・・・
住宅の壁を造るのではなくて、沖縄の民家みたいに突き抜けているのも
風が通り、周辺環境にとっても気持ちいいのでは?と考えました。
上は配置のイメージ、下は配置図。
南面は沖縄のヒンプンのような緩やかな目隠しで緩やかにプライバシーを守り、
山取りした木々で町と応答します。
この家の住人は施工をした「自然とすまい研究所」の社長である中山さん。
那珂湊の家(住宅特集2009年10月号)を施工していただいた工務店です。
ストーブのある吹き抜けた部屋はリビングでもあり、仕事柄,打合せにも使用する予定。
外壁・内壁は火山灰(そとん壁・薩摩中霧島壁、製品開発のお手伝いをしました)。
床はテラコッタタイル(ファビアン・コーポレーション)と赤松の無垢フローリング。
北側に遊歩道があり、南面の、
町を引き込んで遊歩道に抜けていくような開口部を設けています。
開放的でありながら、十分な「引き」が取れて町と良い関係で居られます。
また、開口部に仕掛けられた木製建具で
町や遊歩道との関係を制御できるようにしてあります。
外からアミ付きガラリ戸、ガラス戸、障子の構成。
アミ付きガラリ戸は昼間西日を防ぎ、風を通し、町からの視線を遮ります。
昼も夜も活躍するツールとなりました。
2階の寝室は琉球タタミ(本物です)。
低く抑えられた開口部が控えめな佇まいに繋がっています。
この住まいの設備設計の目標はハイテクとローテクをうまくバランスさせること。
ハイテクの設備として、燃料電池を搭載しています。
次世代のシステムとしてメーカーの協力を得て、モニターとして搭載しています。
お湯と電気を同時にこの家で創り、送電ロスを減らし、
ライフスタイルに合わせ、必要なだけのエネルギーを創り出しています。
また、空気集熱式ソーラーシステム(そよ風)も搭載し、
冬に軒先から新鮮空気を取り込み、屋根で暖め、床暖房・・・。
晴れていないときは、補助暖房が自動的に作動します。
夏には夜間放射冷却現象を利用して、屋根で空気を冷やして、涼風を取り入れる。
このシステムだけでこの家の必要な暖房エネルギーの40%をカバーできます。
単純なシステムですが、環境や天気と応答した日本の情緒を感じさせます。
燃料電池やソーラーシステムのような機械設備だけでなく、
住まい手の強い要望で薪ストーブを設置。
原始的な暖房システムとも言えますが、
住まい手が直に操作をする、「楽しみとしての装置」は
人間らしい暮らしに欠かせないものでしょう。
炎が与えてくれるものは暖かさだけではく、
薪の爆ぜる音、香りなど、ハイテク設備にはないものです。
ストーブを炊いた時に吹き抜け上部に上がっていた熱を
ソーラーシステムの循環モードで回収して床下に送り込み
床暖房と蓄熱を行います。天井面と床面の温度差を少し解消することができます。
ハイテク(エネファーム)と中テク(ソーラー)、ローテク(薪ストーブ)が
うまくお互いの欠点を補っているような関係が組めました。
いい設計とは
このような設備を無理なく、スムースに融合させる事だと思います(今回うまくできたかどうかは別として)。
見えない空気や熱、音や手触り、香りなどがきちんとデザインされていることが大事。
見えないものをきちんと考えた設計は、
その「良い意志」が必ず「佇まい」に表れるのではないか?と信じたいと思います。
浴室はソーラーの捨てている夏排気を軸流ファンを利用して取り込み
洗濯物を乾かすことに利用しています。
ローテク中のローテク・・・(笑)。
守谷の家(
新建築・住宅特集 2010年5月号)
設計:伊礼智設計室(伊礼智 一場由美)
施工:
自然と住まい研究所
写真:西川公朗
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