伊是名・銘苅家
伊是名島にある重要文化財の銘苅家です。
伊是名島は沖縄本島北部の今帰仁村の運天港からフェリーで1時間。
琉球王朝ゆかりの地・・・銘苅家が第2尚家(尚円王)を生んだ家です。

24年ぶりに銘苅家を訪ねて伊是名島の伊是名集落に行きました。
あの頃はまだ学生。フクギの防風林が集落を覆い、
ひとつの小宇宙のように思えたものでした。

しかし、今ではその小宇宙はなく、伊是名集落にかろうじて面影が残るのみでした。


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1985年頃の伊是名島の集落


24年前に訪ねた銘苅家ですが、記憶にあまり残っていません。
所在地も地図と道路の案内を頼りに出かけました。

ところが、島の幹線道路には案内が出ているのですが、
近くに来ると案内がさっぱりなくなります。

ちょっと不安になりながら、
フク木の防風林に覆われた集落に入ると、どの家も風情があり、
うろうろしていると、一軒だけ、簡素だけれど品のある住宅に出くわしました。

ひっそりした佇まいは一般の民家だと見受けられました。
その品の良さに、おそるおそる中へ入っていくと、誰もいない様子・・・・
カーブした石垣からして、もしかしたら・・・と思ったら
看板がひとつだけ、これが銘苅家であるとの簡単な解説のみ。
これが銘苅家?・・・何とも、おおらかな重要文化財ではないですか!!

銘苅家の特徴はカーブした、招き入れるような石垣・・・
これがこの家の特徴で・・・美しい。
招き入れる先は、たぶん、もと畜舎?(笑)・・・士族の家だと思いますが
普段の生活性を重視した設計だと思いました(笑)。

いや、久米島の上江洲の石垣が路地に対してカーブしているのは
風水からきたもので、魔物をはね返すためだと聞いています。
魔物は直進してくるのでヒンプンなどを正面に設けてはね返す(食い止める)のですが、
石垣をカーブさせることで、魔物に肩すかしを食わせる?のかもしれません(笑)。
その道びく先が畜舎であって、母屋ではない・・・というのが意図かも知れませんね。


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お客様は屋根付きの門をくぐってアプローチします。
でも、ちょっと面倒な感じですね。

母屋の素朴な美しいプロポーションもさることながら、足を一歩踏み入れた時から
実は、写真、左手の元畜舎(たぶん)のプロポーションに心を奪われていました。
あの軒の低さ、横長の単純な形・・・
豪華なごちそうではなくて、まるできちんと出汁を取った
良くできた美味しいみそ汁やご飯のような味わいです。

そうはいってもまずは母屋から・・・ヒンプンの見返しの写真です。
銘苅家は路地からヒンプンの距離がかなりあるのも特徴です。
理由はわかりません。
でも、それがこの家の品格に大きく寄与していると思います。
公と私のあいまいな部分が大きい・・・それが周辺の民家と異なり、銘苅家の魅力のひとつです。


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そこで、母屋の断面を早速実測!!
やっぱり低い・・・地面から軒先(たる木下)まで2100ミリです。
これくらいの高さはいいですね・・・極端でもなく、もの足りなさもなく、
程よい、申し分のないプロポーションだと思いました。

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母屋の雨戸の敷居にご注目下さい。
これは建築家・中村好文さんの話を聞くまで気づかなかったのですが、
敷居に水抜きの工夫など、工夫が凝らされています。
溝に竹?のようなものを埋め込んであるように思えました(ぼくの勘違いかもしれません)。
*単にカンナをかけて間がなかったので、そう見えたかもしれません。

中村さんはこの部分の仕事を見て、
この大工のこだわり、建築に対する眼の確かさを感じたようです。

詳しくは中村さんの「意中の建築」下巻(新潮社 2800円)をご覧下さい。
たぶん、昭和54年に手を入れた時の仕事ではないか?と思うのですが・・・
文化財というのは初期の状態よりもどう手を加えられていったか?
その時、どのような職人が関わったのか?というのがとても重要に思います。


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そして気になってしようがなかった、元畜舎?(今は納戸)に移ります。
文化財とはいえ、何度か手を入れています・・・
この部分は柱や梁をみてもかなり新しいと思いました。

軒先の高さが極端に低いこと、
土間と中庭の芝生の部分が段差ないこと、
土間から外壁が生えてきたようなつくりになっていることが、
この美しさの要因だと思います。

余計な線がない・・・とてもシンプル。
こんなプロポーションの住宅を設計していきたい・・・というわけで早速実測!!

軒下1685です・・・ほぼ、ぼくの身長。
軒の低くさが美しい。


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銘苅家の最後の特徴をご紹介しましょう。
母屋からアサギ(ハナレ)にアプローチする仕掛けです。
恐らく、お祝い事とか、行事の時のみ、
通路に蓋をして歩けるようにしたのでは?と思います。

ごちそうを持って、ここを渡ってアサギ(ハナレ)に届ける映像がよぎりました。


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*この家は1906年(明治39年)に建て替えられ、昭和54年に修復を行ったようです。
by satoshi_irei | 2009-01-06 11:11 | ・建築巡礼 | Trackback | Comments(2)
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Commented by てんもり at 2009-01-07 18:27 x
こんにちは、沖縄のてんもりです、ご無沙汰しております。
銘苅家には、昨年、一昨年と2年続けて「しまあかり」というイベントでおじゃましました。
ろうそく行燈の光で浮かび上がる銘苅家は実に幻想的でした。
特に2007年はjimamaのステージの後半から月が昇ってきて印象的でした。(2007年12月6日の記事)
一番座に座ってひんぷんの方を見る時にあの低い軒先がいい感じに視線の上部を遮るんですねぇ。
遅くなりましたが、本年もよろしくお願い申し上げます。
Commented by SATOSHI_IREI at 2009-01-07 19:50
てんもりさん
いつもブログを拝見させていただいています。
最強の沖縄食い物ブログですね(笑)。
「しまあがり」というイベントは新聞で読んでいました。
あの何もないところに蝋燭の明かりは素敵すぎます。
今年もよろしくお願いいたします。

我楽そば・・・どうしてもお店を見つけることができません(笑)


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